beipana

DIYアーティスト beipanaのメモ的なブログ。主にスチールギターを用いたチルアウト、ダウンテンポ、ミニマル、アンビエントな音楽を制作する。自主制作CD『Lost in Pacific』は、英国ウェブメディア『FACT』にてライターが選ぶ2016年ベスト盤に選出。最新EP『Sunset Steam』を2月15日から配信中。 https://linktr.ee/beipana

YouTubeで90年代主体の日本語ラップのプレイリスト再生数が上昇中

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screengrab from japanese rap when slaying enemies with your katana

YouTubeの日本語楽曲キュレーターtardiobscurusさんが、2020年9月に90年代の楽曲を多く含んだ日本語ラップオンリーのプレイリスト『 japanese rap when slaying enemies with your katana』を公開しました。2週間で13万回再生突破してます。

 

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tardiobscurusさん

この動画の制作者tardiobscurusさんは、今年の4月から突然日本の音楽のプレイリストを作成し始めてます。おそらく高校生。

侍らしき人の画像と『 japanese rap when slaying enemies with your katana』=『 刀で敵を斬る間に聴く日本語ラップ』というタイトルが特徴的です。

こうしたプレイリスト動画のスタイルは、hasoyiさんというキュレーターの方がオリジナルだと思われます。hasoyiさんの代表的なプレイリスト動画はこちらです。

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この半分風景写真+半分プレイリストといったヴィジュアル、『japanese indie songs that will make you dance while you're trying to study (kind of) / playlist(勉強をしようとしてる最中に踊らせてくる日本語インディー・ソング)』のように【○○の最中に○○なjapanese ○○】といったタイトルの付け方は、2019年~2020年でひとつのプレイリストのモデルとして浸透してる印象です。

YouTubeで"indie music"と検索すると、こうしたスタイルのプレイリスト動画が上位表示されることもあり、インディー音楽界におけるlofi hip hopの勉強少女的なゲームチェンジングの兆しを勝手に感じてます。

今回日本語ラップのプレイリストを公開したtardiobscurusさんの動画も、indie musicというワードで検索上位に出てきます。自分の検索結果が最適化されている可能性もありますが…。

 

インディーロックが人気の傾向

tardiobscurusさんの動画の大半は、参照元であるhasoyiさん同様、マスロック、インディーロックなどが上位の再生数を占めています。

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そんな中、2020年9月11日に公開した日本語ラップのプレイリスト『 japanese rap when slaying enemies with your katana』は、公開から2週間で13万再生を突破。すでにチャンネル内で上から6番目に多く再生されている状況です。

彼が日本語ラップを含んだプレイリスト動画を作ったのは、これが初めてではありません。上記キャプチャにも掲載されていますが、5月に『japanese rap/r&b while starring at the neon signs』=『ネオンサインを見つめている間に聴く日本語ラップ/R&B』というプレイリストも公開しています。

最新の『 japanese rap when slaying enemies with your katana』が、2週間で13万回再生突破しているのに対し、こちらは公開から4か月以上経過した現時点で8万回。公開直後の再生数も多くなかったと記憶しています。また『japanese rap/r&b while starring at the neon signs』というタイトル通り、ラップと歌ものが混ざっていたり、90年代の音源がメインというわけではなかったりします。

事前アンケート結果ではラップは最も人気が低かった

コミュニティ機能を用いてどのジャンルを聴きたいかというアンケートを定期的にフォロワーから募っています。実はラップは、以下の通り毎回のアンケートで最も人気が低い状況でした。

2020/9/6週(プレイリスト公開前最後)のアンケート結果

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2020年8月末頃のアンケート結果

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2020年7月末頃のアンケート結果

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2020年6月末頃のアンケート結果

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こうした結果を踏まえてか、5月の『japanese rap/r&b while starring at the neon signs』以降、tardiobscurusさんは、ラップに関する動画をアップしていませんでした。

ですが、今回tardiobscurusさんがラップのプレイリストを公開した理由は、「既にプレイリストは作ってあるので無駄にしたくないから」だそう。

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人気がないかと思いきや、結構な再生数になりましたね。アンケート、あてにならないですね …

他の海外発日本語ラッププレイリストとの違い

海外発っぽい90年代日本語ラップのプレイリスト自体は、別の方が既に6月時点で以下の『90's Hip Hop Classics - 日本語ラップ (Japanese Rap) 』を公開されてます。

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2020年9月30日時点で66万回再生。こちらは、画像、タイトル、選曲を見ると、文脈もプレイヤーもきちんと把握されて作られている印象です。

 

一方、tardiobscurusさんのプレイリストは、多くの音源は90年代のものに絞られてはいるものの、先に述べたインディープレイリスト・マナーに則り、【無関係な風景画像のヴィジュアル + 画像にちなんだ"japanese ○○ while ○○ing的"タイトル】という、本来の文脈を無視し、雰囲気・バイブス重視で作られています。

結果、自身のチャンネルフォロワーや、その手のjapanese indie プレイリスト動画ファンなどにリーチし、意識的に日本語ラップを聞く層だけではなく、以下の様なaesthetic 的、BGM的に日本語ラップを聴く層を作り、届けているのではないかと思われ、これは結構エポックメーキングな状況ではと勝手に感じております。

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そして「日本語ラップは世界中で近々そういう聞かれ方するのでは?」ということを、2019年の3月に『ローファイヒップホップとは』というテーマで出演させていただいたアフター6ジャンクションにて、自分が宇多丸さんにお話したのを思い出しました。

90年代日本語ラップが全世界で聞かれるかもしれない

(beipana)なぜかっていうと、80年代シティポップ……日本の竹内まりやさんとかがYouTubeで流行っているじゃないですか。で、あの背景を、シカゴのDJの方が話していたんですけども。「アメリカの若者はリサイクルされ、リメイクされまくった結果、自国の過去の記憶が消費され尽くしちゃった。なので他者のノスタルジーを求めてシティポップくみたいなものを聞いてるんじゃないか?」って。

(宇多丸)自分たちの国にはなかった、過去のノスタルジーを?

(beipana)「リメイクやリバイバルによって、80年代に手垢がつきまくっていて、若い世代が純粋なノスタルジーを感じられない。だから、他者の80年代にノスタルジーを求めるしかないみたいな。そこに"懐かしさ"が保存されているというか。なので、いまシティポップが聞かれているんじゃないのか?」という。

(宇多丸)これね、音楽だけじゃなくて、ファッションとかも。アメトラ……アメリカントラッドを日本人が解釈してファッションを発展させてきたっていうのにもちょっと似てますね。なんかね。

 

(beipana)そういう風にしていま、シティポップというものが流行ってはいるんですけども。でも結局80年代のものなので、それもいつか尽きる。そうなった時、どうなるのかな?って僕は思ってるんですけど、次に90年代に行くんじゃないのかなと。で、90年代的なものもいま、すでにリバイバルされていますし。80年代と同様に手垢がつきまくっている。そうなると、また同じように日本の90年代に手を伸ばすんじゃないかな?って。

(宇多丸)そうなるとしかも、Lo-fi Hip Hopのルーツにどんどん近づいてくるっていうか。

(beipana)その可能性がすごくあるんじゃないかなって。

宇多丸とbeipana Lo-fi Hip Hopを語る - Part 3

このくだり、lofiの大きな礎となった日本語ラップシーンをけん引されている宇多丸さんとお話できるとても貴重な機会だし、元のlofi記事のような確証ベースの話だけに留めたくないなと、打ち合わせ時に思いつき、ねじ込んだ感じです。

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改めて文字起こしを今読むと、肝心のアメリカと80年代ノスタルジーの部分が整理しきれてない…。参考にしたインタビューは以下です。これを言いたかったんです…。

アメリカは、70年代と80年代を今もなお延々と商品化することで飽和させてしまっているため、若い世代は、当時が実際にどういった雰囲気だったかをイメージすることさえできない。
日本のシティポップは、手つかずと思えるほどに西洋から影響を受けており、かつて我々が持っていた文化の汚染されていないバージョンでもあり、過渡にコマーシャライズもされていない。
シティポップによって自分たちのものではない時間や場所を思い出せてしまうこと、それらにノスタルジーを感じられることは、多くの人にとって新しい体験なんだ。

引用:City Pop, the optimistic disco of 1980s Japan, finds a new young crowd in the West

 

雰囲気を楽しむ日本語ラップリスナーは、今後どのように拡大していくんでしょうか。ゆくゆくは、以下の妄想が実現する状況になったら最高ですね。

これ(アメリカとノスタルジアとシティポップの関わり)は、杏里さんのライブ公演にまつわる文章として掲載されていて。つまり、音源としてリバイバルした後、今は杏里さんが現地に行ってライブをされている。

だから、もしかしたら、すごく先の、すごく楽観的な想像なんですけど、90年代日本語ラップが消費されるようになって、海外でRHYMESTERやスチャダラパーが認知されて。実際に北米でライブ公演をするみたいな未来があるのかもな?って。 

宇多丸とbeipana Lo-fi Hip Hopを語る - Part 3

 

 


後記 

プレイリスト主のtardiobscurusさんの、アンケート結果を無視してプレイリスト公開→その結果発生した結構な再生数という流れのように、新しく何かが生まれるときには、リサーチ結果などの確証に基づかない行動も重要かもですね。 

そういえば、lofi hiphop文化をリードしているchillhopのceoも、lofi hip hop文化の象徴となった"study”ってワードは、実は結構適当で「たまたまそのタイトルの動画が人気になった」と語っています。チャンネル創設初期はビジュアルもタイトルもとにかく色々試したらしいです。結果、いくつかのチャンネル同士のトレンドが混ざり合い、今の形になったようです。

open.spotify.com

 

適当に行けよ 考え込むな~

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以上。メモでした。

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