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気になったものを調べてメモる

SoundCloudで海外アクセスが10倍以上になった経緯のまとめ

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SoundCloudで放置しっぱなしだった自分のトラックが、レコメンド機能によってアメリカ経由の再生回数が10倍以上、再生総数は例年の倍以上になっていました、という内容です。

 

放置していたのに前年比倍の再生数になっていた

こちらが2014年から2017年までの該当トラックの再生回数の推移です。 

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自分自身、存在を忘れるほど放置していたにもかかわらず、なぜか2017年に急に再生数が跳ねあがっていました。総再生数自体は630回とかなり少ないのですが、前年比倍増という現象はさすがに気になったので、細かく探ってみることにしました。

 

アメリカで最も再生されていた

国ごとの再生回数の内訳をチェックしたところ、アメリカで最も多く再生されていました。全再生数の半分以上がアメリカ経由でした。

■該当トラックの再生割合

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他のトラックは9割が日本経由

ちなみに、その他のトラックはどれも以下のような感じで、再生数の約9割が日本です。フォロワーの方が日本人であるため、ツイッターでの告知が流入元のケースが多いためだと思います*1

■他のトラックの再生割合の一例

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そもそも該当トラックの再生割合は、今までどんな内訳だったのか?過去4年分の国別再生回数もまとめてみました。

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アップロード後の2年間は日本経由での再生が大半でしたが、2016年は前年比17倍、2017年はアメリカでの再生回数が前年比5倍、平均比12倍になっていました。誤差の範囲でポチっと再生されていたものが、2017年には意識的に再生されていたということですね。

SNSで告知したこともなく、導線はほぼ無くなっていたので、本来は日本の再生回数のように徐々に減少していく定めのはずなんですが。

レコメンド機能が搭載された2016年に大きな動きがあった

再生回数自体はとても少ないものの、前年比17倍増という謎の事象が発生した2016年は、SoundCloudにとってレコメンド機能の実装という大きなアップデートが行われた年でした。

7月22日からリコメンド機能が追加され、WebサイトにはDiscoverタブが、アプリの場合は検索タブにDiscoverによるオススメ楽曲が表示されるようになった。SoundCloudアルゴリズムによりユーザーに好まれるであろうトラックを見つけ出し、"フレッシュで新しい楽曲のみ"を表示すると述べている。

SoundCloudがアルゴリズムによるリコメンド機能を追加 FNMNL

 

この「レコメンド機能」と今回の事象は関係があるのか?を確かめるべく「レコメンドリスト経由の再生回数」と「アメリカ経由の再生回数」の月次再生数の相関を調べてみました。

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ぴったりと比例しました。おおー。つまり、該当のトラックは「レコメンドリスト」によってアメリカ経由の再生が増えたと言っても間違いないはず。

 

では、なぜアメリカ国内のレコメンド・アルゴリズムの中に自分のトラックが組み込まれたのでしょうか?「トリガーになったアカウントが存在するはず」という仮説のもと、次はレコメンド機能がローンチされた2016年7月22日まで遡って、それ以降に再生してくれた「アカウント情報」を見ていきます。仕事感。

 

2016年11月にトリガーとなったアカウントが登場

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「レコメンド機能」ローンチ4ヵ月後の2016年11月に気になるアカウント*2を発見。2,000人以上のフォロワーを持ち、再生履歴などを見ると「バレアリック解釈の和モノ」に興味があるような印象を受けます。

このアカウントの方が2016年11月に該当トラックを再生&お気に入りした同タイミングから、アメリカと日本の再生数の順位が入れ替わっています。よってこのアカウントがトリガーになったという考えで間違いなさそう。

 

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このアカウントはどうやって私を見つけたのか?

どうやって該当トラックまでたどり着いたのかは、残念ながらSCの分析機能上わかりそうにありませんでした。とにかく和モノが好きなこのアカウントの方が、何かの拍子に私の音源を何度か再生し、お気に入りしてくれたことが発端であることまではわかりました。

調査はいったんここで終了。

 

再生範囲が5ヶ国から43ヶ国に拡大もしていた

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その他で興味深かった点は、2017年は43ヶ国で再生されていた点。2014年は15ヶ国、2015年は10ヶ国、2016年は5ヶ国とキレイに減少していたため、国外再生のポテンシャルは2016年に死んでいたとも言えます。それがレコメンド・アルゴリズムによって蘇生したようです。アルゴリズムゾンビ。

 

【結論】再生行為・お気に入りもRepost並みの影響を持つようになったのかも

SoundCloudは長い間「強い影響力を持つアカウントの拡散」がティッピングポイントだったと思いますが、2016年のレコメンド機能搭載以降は「強い影響力を持つアカウントによる再生行為・お気に入り登録」にも同等の影響力があるといえるかもしれません。

SoundCloudが2017年に分析機能を拡張させたおかげで、細かい事象を調べることができましたが、パブリッシャーが過去の履歴を遡ってレコメンド・アルゴリズムベースのティッピングポイントにたどり着くにはそれなりの労力が必要です。

ティッピングポイント(アカウント)を簡単に割り出してくれる機能」があれば、経緯をいちいち辿る作業(とても疲れる・・・)をスキップしてアプローチできて便利だなと思ったす。直接コミュニケーション取れるようになるし。

Discogsが出会い系アプリと同じソフトウェアを用いてマーケットプレイスを構築しているという話を踏まえると「相互作用のあるアカウント同士をマッチングさせる」というアイデアはもしかしたら既に出ているかもしれません。とはいえリスナーをいかに課金させるかが目下の最重要課題っぽいので、あまり期待できませんが・・・

 

ネクストステップ:さらに7倍に成長させました

「無風状態だった泡沫トラックが、アルゴリズムによって海外で動き始めた」という今回の件は「YouTubeのアルゴリズムが和モノのレコードリイシューを促進させる」という事象のミニチュア版のようでもあり、自分ごとである点を差し引いても興味深い内容でした*3

とはいえ、年間630回再生という数値はちょっと寂しい。せっかくならもっと大きな規模の事例が欲しい・・・

ということで、既存アカウントとは別に、海外経由の再生数を意識したアカウントを新たに作ってみました。現在こんな感じです。

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2017年12月に作って、9ヶ月でおよそ4,500回程度。国外:国内の再生比率構成は98:2。国内でこの環境構築したの結構レアな気がしますがどうなんでしょう。

 

この新しいアカウントをどうやって作ったかもいつかまとめたいす。先ずはサンクラの存続を祈ります・・・

補足:このエントリーを書いた背景

こういう視点で語られている記事ってあまり見ないよなと思って書いた次第です。世界の音楽メディアを見ても、レコメンドやディープラーニング系のアルゴリズムを積極的に説明していない印象。「なぜか急にTOPページでレコメンドされてて、気付いたら流行ってた」的な語り口が多い。この「YouTubeのアルゴリズムはどうやって、PLASTIC LOVEをモダンクラシックに変えたか?」動画に至っては、シティポップの説明に終始しており、タイトルの「どうやって?」の答えになってなかったり・・・。

 

国内での再生数を見ていても、こうした事象が分かりづらいため、必然的に国外アクセスに焦点を当てた内容になっていますが、それが一番大事というわけではなく、個人的には直接会って「良かったよー」と言われることに勝るものはないし、演奏もDJも楽しい。ネット上でお勧めいただけるのもすごく嬉しい。ここ最近はSamplingloveさんのBlogで何度か取り上げていただいたのも嬉しい限り。

 

ということで、国内・国外どちらもお聴きいただいてありがとうございますという気持ち。

 

このブログの著者について

beipana ( @beipana
コンポーザー、スティール・ギター・プレイヤー、DJ。2015年8月にデビュー7インチ『7th voyage』をJETSETよりリリース。同年11月に発売した、Nicole(My Little Airport)、VIDEOTAPEMUSIC、荒内佑(cero)などが参加したデビューアルバム『Lost in Pacific』は、英国ウェブメディア『FACT』にてライターが選ぶ2016年ベスト盤に選出。

*1:関連トラックやレコメンドの影響もあるんですが、それはまた別の機会にまとめたいです

*2:不本意な紹介の仕方かもしれないのでアカウントの詳細は伏せました。

*3:YouTubeとサンクラの大きな違いはディープラーニングを搭載しているか否かなので、単なるミニチュア現象ではないと思います。サンクラは、YouTubeSpotifyとは違い、ディープラーニング系のトピックが自他共に一切話題にあがらないので、おそらく未搭載(18年9月時点)と思われます。