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インディービートメイカーが10分で作ったビートがウィルスミスの動画に使われた話

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2018年9月末は、ウィルスミスが自身のYouTubeチャンネルにアップしたバンジージャンプ動画がアメリカで大きな話題になりました。その裏で、実はインディペンデントなビートメイキングシーンも別の盛り上がりを見せていました。

このエントリーは、YouTubeを中心に活動しているビートメイカー、サラ(sarah2ill)が10分で作成したビートが、ウィルスミスの動画のBGMとして使われた話をまとめた内容です。

大きな話題になったウィルスミスのYouTube動画

実際のウィルスミスの動画がこちら。冒頭で使われているのが彼女のビートです。

ウィルスミスは、50歳の誕生日を祝ってバンジージャンプを行った模様を2018年の9月にYouTube Offcialコンテンツとして公開。2日間で1750万回以上再生され、アメリカでトレンドTOPになりました。上に貼り付けた動画は、そのコンテンツのティザーです。


sarah2illが10分で作ったビートが使われた

この動画に使用されたビートメイカーsarah2illにとって、今回のウィル・スミスによるフックアップは寝耳に水のようで、ビックリしたことを本人がこちらの動画で伝えています。彼女はビートだけでなくビデオも毎回センスが良く、自分は少し前にチャンネル登録していたため、この動画経由で今回の件を知りました。

前回のビデオでこう言ったよね?「ウィル・スミスってどうやってビデオで使うビートを見つけてるんだろ?わたしも作りたいな」って。

で、今朝シャワー浴びた後、いつものようにYouTubeを開いて、ウィルスミスのバンジージャンプのビデオを見てたらさ、「あれ、これわたしのビートじゃん!」って気付いたんだ。

このビート、少し前にアップしたばっかりだよ?"Made a lo-fi / boom bap beat from scratch in 10 minuted"ってタイトルでアップした曲ね。そう、これ10分で作ったビートだから。本当に信じられない・・・

 

sarah2illについて

サラはオークシティー在住の29歳のビートメイカー。本人は!LLSTRUMENTALIST(イルストルメンタリスト)を自称しています。YouTubeをはじめ各種ソーシャルメディアで活動中です。仕事の合間にビートメイキングをしていたら同僚から興味を持たれたことをきっかけに、専用のYouTubeチャンネルを開設しました。

J Dilla、Q Tip、ファレル、ミッシーエリオット、ティンバランドなどが自分にとってのメンターだと語っています。特にKAYTRANADAが公開したJanet JacksonのifのRemixにとても影響を受けたとも。

彼女は完成されたビートのみでなく、好きなレコードについてや、それらをサンプリングするビートメイキングの過程、自身の考えなども公開しています。とにかくいずれの動画も編集スキルが高く見ごたえがあり、自分はいつの頃からかファンになっていました。

経歴

幼少期に親の影響でモータウンの音源などを聴いて音楽好きに。大学で音楽産業について専攻後、ヨーロッパへ留学、ニューヨークでMTVなど複数の企業でインターンシップを経験し、現在の活動を開始しました。

この同時期にKAYTRANADAにハマり、さらに彼を通じてJ Dillaにも興味を抱くようになります。そしてDillaをより理解するために30日間ビートメイクを続けるチャレンジ(いわゆる"30 day beat making challenge")を自身に課し、現在に至る3年間、毎日ビートを作り続けています。いずれも15分で完成させるそうです。

「たまたま10分でつくったビートがウィルスミスに見つかった」のではなく、彼女は短時間でのビートメイキングを3年間毎日やっていたんですね。にしても夢のある話。継続は力なり。

オリジナルブランドも展開中

音楽活動と並行して、No Quantizeというオリジナルブランドも展開中です。

Quantize(クオンタイズ)とは、演奏データのタイミングのズレを補正する効果・機能です。リアルタイムに打ち込んだビートを8小節・16小節などに割り振って、最適な箇所に配置し直してくれる機能として多くの機材に搭載されています。

サラの「No Quantize」とは「クオンタイズしない」つまり不均一でヨレた状態、Dillaのようなビートを想像するとわかりやすいと思います。事実サラは「9th Wonderのようなクオンタイズしていないビートが好きなことに由来している」と語っています。

 

こちらの「NO Quantize」を直訳した「量子化しない」という日本語が書かれたグッズがシブい!ちょっと欲しいかも。ちなみに全て自分でデザインしており、メインツールはiPadとiPhoneだそう。多才。

 
 
 
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“For the Culture” T-shirt at NoQuantize.com ___________________________________________________________ 🧔🏾@Nothing_Neue 📷 @kweefqake 👕: @NoQuantize

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ウィルスミスとLo-fi Hip Hopシーンについて

実は今回のサラ以前の2018年の7月にも、ウィルスミスはインディビートメイキングシーンを騒がせていました。近年のLo-Fi Hip Hopブームの火付け役ともいえるレーベルChillhop Record所属(?)のビートメイカーL'indecis の 楽曲『Soulful』が、ウィルスミスのインスタグラムで公開した動画のBGMに採用されたんです。

 
 
 
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I took my Kids SCUBA DIVING today!! Major ✔️ on my Parenting Bucket List @treysmith0011 @c.syresmith @willowsmith

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さらにその投稿にクエストラブがコメントで「誰の曲?」と反応し、L'indecisの名前も広く知られることに・・・

ウィルスミスのBGMのチョイスは、ジャジーなBoom Bapを多様するユーチューバーCasey Neistatからの影響も感じます。つまりこうしたビートを採用することはある意味ユーチューバーの王道的なチョイスでもあり、こうしたフックアップは日々無数に起きているんでしょうが、それがウィルスミスとなるとかなりインパクトがありますね。

今回の件、サラの「10分で作ったビートがウィルスミスに使われた~」という発言を額面どおりに受け止めると、運に恵まれた面が強調されがちですが、3年間毎日ビートメイクを欠かさず、さらに下地として音楽産業学の専攻やニューヨークでの音楽マーケティングの実地経験があったからこその成果なんだろうなと思いました。

引き続きサラもウィルスミスも楽しみながら鑑賞します。

 

サラのウェブサイトはこちら。

このブログの著者について

beipana ( @beipana

コンポーザー、スティール・ギター・プレイヤー、DJ。2015年8月にデビュー7インチ『7th voyage』をJETSETよりリリース。同年11月に発売した、Nicole(My Little Airport)、VIDEOTAPEMUSIC、荒内佑(cero)などが参加したデビューアルバム『Lost in Pacific』は、英国ウェブメディア『FACT』にてライターが選ぶ2016年ベスト盤に選出。